研究内容
研究概要
小さな分子、特にイオンが複雑に入り組んだ構造の中を輸送するとき、どのような経路を輸送し、どのくらいの速さで(伝導・拡散)することができるのか?ナノスケールの世界で起きているイオン輸送現象は、生体分子(生命科学)から高分子材料(材料科学)まで、幅広い分野で重要な役割を担っています。
私たちはこういった実験では見ることの難しい時空間スケールの現象を理論(分子シミュレーション)を用いて解明し、理論的に高効率かつ高機能な分子設計を行い、実験グループと協力しながら人工細胞や分子システムを構築する工学的応用から創薬などの医療応用まで幅広い展開を目指しています。
分子シミュレーション
理論・計算化学の手法、特に分子動力学(MD: Molecular Dynamics)法を基盤として研究を行っています。
生体分子や高分子のシステムで起きている幅広い時空間スケールの動的性質(ダイナミクス)の解析に対応するためには、時空間スケールの異なる計算手法を組み合わせたマルチスケールシミュレーション技術が重要です。
マルチスケールシミュレーションの概念図
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量子化学計算(Quantum)
量子力学のシュレディンガー方程式に則って電子状態を計算 -
反応MD(Reactive MD)
量子化学計算の結果を基に化学反応をモデル化し、古典力学の枠組みで化学反応を取り扱う -
全原子MD(Atomistic MD)
古典力学のニュートンの運動方程式に則って原子の動きを計算 -
粗視化MD(Coarse-grained MD)
複数の原子を1つの粒子として取り扱い、より大規模な時空間スケールの現象を計算